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pub-3 「スポーツ選手に対するポリエステル人工素材で補強した半腱様筋・薄筋腱(ST/G)による前十字靭帯再建術と術後超早期リハビリテーションの効果」

J Japan Knee Society. 25: 216-221, 2001.

要約

 近年の膝前十字靭帯(以下 ACL)再建術の臨床成績向上はめざましく、後療法も加速化の一途をたどっており、早期スポーツ復帰が可能となった反面、再建靭帯の再断裂例が少なからず報告され、加速後療法の是非を問う報告が散見されるようになった。我々は早期スポーツ復帰を目的とし 1986 年より一貫として自家組織を人工素材で補強す る ACL 再建術を行ってきたが、1995 年よりは、術後の大腿四頭筋筋力回復を重視し、自家組織を膝蓋靭帯から 束半腱様筋・薄筋腱(以下 ST/G)に変更、また鏡視下法を採用することにより超早期後療法が可能となった。本研究の目的は超早期後療法を行った本術式の臨床成績を検討し、その有用性・安全性を検討することである。  対象は1995年以後スポーツ復帰を目的に再建術を受け1年以上経過した64例で、超早期後療法を行なった超早期群36例(男19/ 17、平均年齢 24.0歳)、通常の早期後療法を行なった対照群28例(男17/ 11、平均年齢25.7歳)である。スポーツ種目は、超早期群はバスケットボール11例、サッカー7例、バレーボール7例、スキー3例、その他8 例、対照群はスキー8例、バスケットボール5例、その他15例であり、超早期群の30 83%、対照群の1761%が競技レベルであった。
 
 手術術式は、両群とも鏡視下法による自家組織を人工素材で補強するAugmentation法であり、4重束とした ST/Gを全長にわたり人工素材(polyester)で補強するComposite graftである。後療法プログラムは、術後4週間は両群同様(2週間で全荷重歩行退院)に行った。術後4週以後は、対照群は簡単な筋力訓練の指導にとどめたが、超早期群KBW(knee bended walk)、バーベルスクアットと段階的に筋力訓練を進め、アスレチック・リハビリテーションに移行させた。術後3ヵ月頃よりカッティング動作およびジャンプトレーニング、4ヵ月頃より競技に即した瞬敏性・技術訓練を開始、5ヵ月を目標に元の競技を再開させた。 
 
 大腿四頭筋筋力(60°/sec)は両群とも術後経過とともに回復したが、術後5ヶ月以後は対照群に対し超早期群が 有意に回復していた(対健側比;超早期群:術後5ヶ月-平均 87.5% 9ヶ月平均 90.9% 1平均93.8%、対照群:術後 5ヶ月-平均72.1% 9ヶ月-平均80.2% 1平均84.1% (P<0.05) 元のスポーツへの復帰率は超早期群 97%、対照群 86%であった。競技再開時期・試合復帰時期は、対照群がそれぞれ術後7.2ヵ月・10.0ヵ月に対して、超早期群は 4.7ヵ月・7.1ヵ月と、超早期群が早かったP<0.001)。 
調査時における臨床成績は両群ともおおむね良好で、競技動作時の膝くずれは超早期群の35 (97.2%)、対照群 28例全例に認めず、KT1000(脛骨前方移動距離計測装置)Max. -健側差は、超早期群が平均2.5mm、対照群が2.4mmと両群間に有意差を認めなかった。術後1年時の関節鏡評価は正常 ACLに近似するGrade 4、および 一部滑膜被覆の乏しいGrade3を合わせた成熟良好例が、超早期群97(Grade469%, Grade328%)、対照群96 (Grade454%, Grade342%)と、力学的高負荷のかかる超早期群においても再建状態は良好であった。スポーツ選手に対するACL 再建術の最終目標は、より早期に、より良い状態で競技復帰させることである。これを 可能にするためには、膝安定性を確保した上で、関節可動域、筋力、競技専門動作を早期に再獲得することが必要 条件となる。1990年、Shelbourneらにより発表された"Accerelated rehabilitation"は一躍脚光を浴び、以来後療法は加速化の一途をたどってきたが、再断裂や成熟不良症例が少なからず報告され、現在ではその有用性に否定的な意見も多い。その様な中、我々が一環として行ってきた再建術は、本研究結果からも超早期後療法・競技復帰を行わせても靭帯の劣化は生じず、自家組織単独法による欠点を補うものと結論づけられ、早期競技復帰を望むスポーツ選手に対して特に有用な方法と考えられた。