上肢スポーツ障害
野球肘(Base Ball elbow)
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(やきゅうひじ)
野球肘
野球肘(やきゅうひじ)は、野球の投球動作やその他の肘に負担がかかる動作によって引き起こされる肘の障害を指します。
特に投手に多く見られる疾患で、肘の内側、外側、または後ろ側に痛みや損傷が生じます。野球肘にはいくつかの異なるタイプがあり、それぞれの症状や治療法が異なります。
主なタイプと原因
- 内側側副靭帯損傷(UCL損傷)
- 原因: 投球動作による繰り返しのストレスが内側側副靭帯(UCL)にかかり、靭帯が損傷または断裂することがあります。特に速球を投げる際の強い力が原因です。
- 症状: 肘の内側に痛みや違和感が生じ、投球時に痛みが強くなることがあります。重度の場合、靭帯の断裂が見られることがあります。
- 外側上顆炎(テニス肘)
- 原因: 投球動作や腕の使い過ぎによって、肘の外側の筋肉や腱が炎症を起こすことがあります。内側側副靭帯損傷とは異なり、こちらは肘の外側に痛みが生じます。
- 症状: 肘の外側に痛みや圧痛があり、手首を使った動作や物を持つ動作で痛みが悪化します。
- 後方痛(後方肘痛)
- 原因: 投球時に肘を後ろに引く動作が多いため、肘の後方の筋肉や靭帯に負担がかかり、炎症や損傷が生じます。
- 症状: 肘の後ろ側に痛みや違和感があり、投球時に痛みが強くなることがあります。
症状
野球肘の主な症状には以下が含まれます:
- 痛み: 肘の内側、外側、または後ろ側に痛みが生じ、特に投球時や運動後に強くなります。
- 腫れ: 炎症によって肘の周囲が腫れることがあります。
- 動作の制限: 投球動作や腕を使う動作で痛みや制限が感じられることがあります。
- 圧痛: 肘の特定の部位を押すと痛みが増すことがあります。
診断
野球肘の診断は、以下の方法で行います:
- 問診: 痛みの発生状況や投球動作の習慣を確認します。
- 視診・触診: 肘の状態を視診し、触診で痛みや腫れの部位を確認します。
- 画像検査: X線やMRIを使用して、靭帯の損傷や骨の異常を確認します。特にUCL損傷の場合、MRIで靭帯の断裂を評価することが重要です。
治療法
野球肘の治療は、損傷の程度や症状に応じて異なります。
保存療法
- 安静: 肘にかかる負担を減らすため、投球やその他の負担がかかる動作を避けます。
- アイシング: 炎症や痛みを軽減するために、痛みのある部分を冷やします。
- 圧迫とサポート: 肘にサポーターやバンデージを使用し、圧迫して負担を軽減します。
- 疼痛管理: 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や鎮痛薬を使用して、痛みや炎症を軽減します。
- リハビリテーション: ストレッチや筋力トレーニングを行い、肘の柔軟性や強度を回復させます。
注射療法
- ステロイド注射: 症状が重い場合や保存療法で効果が見られない場合に、ステロイド注射を行い、炎症を抑えることがあります。
手術
- 靭帯再建手術: 内側側副靭帯(UCL)の断裂が重度である場合、トミー・ジョン手術(靭帯再建手術)が必要になることがあります。手術後はリハビリテーションが必要です。
予防
野球肘を予防するためには、以下の点に注意が必要です:
- 適切な投球フォーム: 正しい投球フォームを習得し、肘にかかるストレスを軽減します。
- 適切なトレーニング: 筋力を強化し、肘の柔軟性を保つためのトレーニングを行います。
- ウォーミングアップとクールダウン: 投球前後に十分なウォーミングアップとクールダウンを行い、筋肉や靭帯を準備します。
- 休息と回復: 過度な投球や負担を避け、十分な休息と回復の時間を確保します。
野球肘は早期に適切な治療とリハビリを行うことで回復が可能ですが、無理をせず、適切な対処を行うことが重要です。